残り日数とやり残したことを考えると、授業のない夜はほぼ毎日のようになんらかイベントを入れなくてはで、手帳を眺めてはあれこれ計画し、勉強以外も異常に忙しい今日この頃・・・。
そして、今日はまたもやメトロポリタンオペラへ。ロッシーニの「Il Barbiere di Siviglia」(セビリアの理髪師)。「Madama Butterfly」に次いで、今年のMETの注目作とされているNew Productionの作品。
オーケストラの前まで舞台をせり出して、ステージ下からもオペラ歌手が登場する演出や、Almaviva役のテナーの若手のJuan Diego Florezが見た目もハンサムなこともあってニュースや誌面によく登場していたり、で。宣伝上手だなあという印象で、個人的な期待はそれほど大きくなかったのだけれど・・・。
感想は、本当にすばらしかったの一言に尽きる。今まで観たオペラの中でも、一番好きな作品と言い切れるし、NYに来てこれに出会えて本当に幸せだと思ったし、この字幕を理解できただけで、英語をやっててよかったなあ(まあイタリア語で分かったらベストなんだけど)と感謝するくらい。コメディオペラなのだけれど、たくさん笑えて、音楽も最初から最後まで楽しくなれて、歌声も主要な人物すべてがすばらしくて、舞台もシンプルながら照明使いが本当に美しくて、あっという間の時間だった。重厚なオペラもすごくステキだけれど、これは文句なしによかった。
そんなふうに思ったのは私だけではなかったようで、これだけ一曲歌うごとに「ブラボー」の大合唱だったのも初めてだったし、いつまでも拍手はなりやまなかった。インターミッションのときや帰りも、観客がみんな笑顔で、知らない人とも会話始めちゃう雰囲気で、こんなオペラは初めて。
演目自体は200年以上も演じられているものながら、古ぼけさせず、果敢に革新的な試みを加えて、これだけ手厳しい評価を下す人たちに絶賛されるものを作り出してしまうMETは、本当にすごいなあと思う。そんなこんなで、大自然も大好きだけれど、最近は、人の作り出す文化の奥深さに完全に魅了されている。オペラの分かる歳になってから、NYに住めてよかったなあ、と思う。たぶん5年前にはこのよさは全く理解できなかったと思うので。